SignⅠ〜天狗のしるしと世界とあたし


「……今さら何を話せと。わたしにはそんな資格はありません。余計に彼を苦しませるだけです……」


「……どういうこと?」


「わたしは彼を騙してきたのですよ。記憶操作という卑劣ともいえる手段で……

どんな顔で会えというのです。自分本位な考えで彼の人生を狂わせてしまったわたしが、今さら合わせる顔などありません」


"ビリビリビリッ!"


また、特大サイズの電気攻撃。


……⁉︎


「オエッ!」


なにやら急に体調が悪くなった。

あたしは口と胸元を手でおさえる。


「美空! 大丈夫ですか!」


一樹があたしの背中をさする。


「……うっ、別に会えとは……オエッ! 言ってない……」


「……⁉︎」


「……ただ話せって、いつき遠距離会話……オエッ!!」


ああ、吐き気が止まらない……



「お願い一樹……ちょっとだけ、 一回だけ奏太と話して……オエッ!!」


「……っ!」


「じゃないと、あたし寝かせてもらえな……オエッ!!」


「美空っ!」


「……ううっ、」


「……っ、」


——バッ!

一樹があたしの手をさらう。

悩むように右手の平をじっと見つめた。


「…………」


「……いつ、」


「分かりました」


ささやくようにそう言って、両手であたしの手を包む。


「ただ、少し時間を頂けませんか」


「……?」


「少しでいいのです。雑なやり方や方便では奏太の心を壊し兼ねません。 わたし自身、そして物事にも整理をつける時間を下さい」


「あ〜。オエッ!」


「あなたに言っているのです伯耆坊!」


——ギュッ!

一樹の両手に力がこもる。