「オレが殺したのはアニキだけじゃねえ、家族の心もだ。 特に親父の落ち込みようは酷かった……アニキを気味悪がっていたオレの母親を毎日責めて罵って、ついには家に帰らなくなった。 母親も母親で開き直り、外に男を作って出て行った」
「…………」
「オレは一人家に残された。義務のように振り込まれる親父からの生活費で今まで生きてきたという訳だ……」
「…………」
「全てはオレが元凶だ。オレがあんな事を言わなければ、きっとアニキは死なずに……」
「違うっ!」
あたしはバッと立ち上がった。
一樹は……
一樹はまだ……
「死んでない! ちゃんとしっかり生きてるんだ!」
「……⁉︎」
奏太が唖然とこちらを見る。
「……何を言っている……」
「だから、一樹は死んでない」
もう一度はっきりそう言うと、奏太は顔を曇らせた。
「おまえ、オレをバカにしてんのか」
「してない」
「オレは今、真剣に話をしているんだぞ!」
「あたしも真剣に言っている」
「あのなぁ、アニキはもう死んだんだ。生きてる訳がないだろう」
「奏太の頭が間違ってる」
「……は?」
「取り替えたんだ脳みそ、ううん、記憶を。どこから違うか分からないけど替わってるんだ」
「……ああ⁉︎」
「だから違うのは頭で奏太で本当は生きててあたしも……」
「おまえさっきから何を言っているんだ!」
「本当の本当は違う記憶で一樹は生きててあたしも一樹に……」
「やめろっ!」
奏太が声を荒立てた。
「いいか、アニキは死んだんだ。何も知らねえお前がアニキの死についてこれ以上口を出すのはやめてくれ!」
「だからあたしは知ってるんだ一樹は……」
「いい加減にしろっ!」
敵を見るようなその目つき……
まるで全てを拒否するように、奏太はピシャリと心を閉じた。
「もう帰れ」
そう吐き捨てる奏太にあたしは何も言えなくなる。
重い心を引きずりながら、静かにその場を後にした。


