SignⅠ〜天狗のしるしと世界とあたし


当時の二人の様子が、まるで見ているかのように伝わってくる……

一樹をよく知っている分、それは鮮明に脳裏を刺激した。



「……そうしてしばらくは穏やかな生活が続いた。 だが、オレが小6んなった時、何故かアニキの能力が近所で噂されるようになったんだ」


「……え、」


「噂はたちまち尾ひれをつけて大きくなった。家が金持ちなのはギャンブルで人の心を読めたからだとか、アニキの成績が優秀なのも、父親がエリートなのも全部その能力のおかげだっつってな。

弁護士だった親父は頭を抱えたよ……

そういう噂のたぐいは職業柄致命的だ。すぐに足元をすくわれる」


「…………」


「興味本位でアニキに絡んでくる奴も増えていった。そしてオレも……」


「……?」


「いわゆるイジメっつーのか……まあ、オレはやられたらやり返してたけどな。アニキを悪く言う奴は誰かれ構わずボコってた」


「…………」


「だがある時、中学生だか高校生だか知らねえが、不良グループに絡まれてな。まだ小学生だったオレは生まれて初めてケンカで負けた。

すげえ惨敗っぷりだった。骨折やら流血やらで意識なくして気付いたら病院のベッドの上だ。

悔しいやら情けねえやら……もう心ん中グチャグチャで訳分かんなくてよ、つい心にもねえ事を言ってアニキにあたっちまったんだ……」


「……心にもねえこと?」


「アニキなんていなけりゃ良かった。こうなったのは全部アニキのせいだってな」


「…………」


「言ったあとすぐに後悔したが、あの時は意地が邪魔して謝る事が出来なかった。 アニキ、すげえ悲しそうな顔してた……」


「…………」


「その後すぐだ。アニキが事故に遭ったのは」


「……事故?」


「飲酒運転のダンプカーにはねられたんだ。即死だったと聞いている」


「……即死……」


「オレが殺したも同然だ……」


「……え?」


「普段あれほど慎重で几帳面なアニキが……簡単に事故になんか巻き込まれるはずねえんだ。 少なくともオレのあの言葉がアニキを動揺させたのは間違いねえ……」


「……それは……」