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「……まあ〜たく、これがとんでもねえヤツラでよお〜。チッコイのとデッケえのと、ほんとバケモン兄弟なんだ」


「へえ」


「銃なんてまるで歯が立たなかったわ〜。まさかあんなに実力の差があったなんて……」


「ふうん」


——9月中旬。


この頃には黒木とユリが家に戻り、あたしはマンションでの生活を送っていた。

不自由だった左手も黒木のおかげで元通りになり、学校へも普通に通えてる。

学校から帰ったあたしは、共有リビングルームで二人の話を聞いていた。


「まさに筋肉オバケだな」


「あんなのどうしろって言うのよ。あのまま闘っていたらD.S.P全員の命がなかったわね」


帰って来てから二人は毎日反省会を開いてる。

なんでも、D.S.Pが必死になって追跡してきたボディ変化兄弟、

それをやっと追い込んだけど、兄弟の力がスゴすぎて、D.S.Pはまったく歯が立たなかったというのだ。

深手を負ったD.S.Pは退避するしかなかったらしい。


「チクショ〜! 完全にナメられたな〜。しかも逃亡先がイギリスだぜえ〜?」


「イギリス?」


「腕試しでもしたいのかしら? わざわざフェノメナの地へ行くなんて」


「ケッ! 華麗なるフェノメナ一族ってかあ〜? ……ま、確かに精鋭ぞろいだけどな〜」


二人はぼんやり遠くを見た。


“ フェノメナ ”


それはイギリス組織で活躍する能力者たちの事だった。

彼らは、水、炎、光、風など、主に自然現象を操る者たちで、その実力はD.S.Pを上回るとされている。

今回は別件で来られなかったらしいけど、D.S.Pの事件には何人か応援に来る事があった。


ちなみに、あたしは以前、その中の一人に特訓を受けた事がある。

バリアー強化できたのは、そいつの特訓のおかげだった。


「フェノメナ以外でも、あっちは人材が揃ってるから私たちが応援に行く必要はないだろうけど……」


「んでも〜、一樹だけは後で合流すンじゃねえかあ?」


「そうね。イギリス、ドイツ、どの組織にも一樹くんクラスのテレパスはいないし、唯一信頼が厚いのは一樹くんだけだもんね」


「……いつき……」


一樹の話題に意識が傾く。


「一樹は、元気なの?」


あたしは二人に聞いてみた。