「……ああ、提出物は明日オレが出しとく」


思い出したように透が言う。


「……え?」


「宿題、代わりに出しといてやるよ。今持ってるか?」


その言葉にあたしはハッとした。


……あ、れ……


そういえば宿題って……


「……どうした?」


透が不審な顔をする。


「……あ〜、」


「まさかおまえ、まだ終わってねえって事……」


「ううん、そうじゃなくて」


「そうじゃなくて、なんだ?」


「……宿題、ぜんぶ燃やした」


……?

燃やされた、か……


「……⁉︎」


しばし透がキョトンとする。

そして、


「……はああああ〜っ⁉︎」


大音量が辺りに響いた。


「……なにっ⁉︎ どうしたのっ⁉︎」


すぐに湧人がこっちへ来る。


「……おまえっ……バカッ! いや、もともとバカだとは思っていたがここまでバカとは思わなかったぞっ!」


すごい剣幕で透はあたしに怒鳴りつけた。


「……ちょっ……みくはバカじゃないしっ! バカって言う方がバカなんだよ!」


「宿題燃やしたって言ってんだぞっ! バカとしか言いようねえだろっ!」


「……えっ、」


「湧人、きのう言ったバキがやった」


「みくっ……それあんま言わない方が! 話がややこしく……」


「ああ? なんだ? コソコソと……」


「……っ、 ……あ、暑かったからだよ! 自然発火現象! 最近はやってるんだよ! 知らないの⁉︎」


「そんなモンはやってたまるかっ! さてはおまえも相当バカだろ!」


「はあ⁉︎ 誰に言ってんの⁉︎ オレ全国模試一位だしっ! そっちがバカなんだろっ!」


「……はああ⁉︎」


……? 何故か二人がケンカしてる。


……もう。


「ねえ、バカはどっちなの?」


「おまえだよバカッ!!」


「……なっ! みくはバカじゃないって言ってるだろっ!」


「じゃあなんだ! どアホか! 脳ナシか! イカレポンコツか!」


「……っ! 自分が全部そうなんだろっ!」


「あああっ⁉︎」


ますますヒートアップする二人……


「……ねえ、」


時々口を挟みながら、あたしは二人を見守っていた……