「……理不尽だよっ!! ずるいよっ!! なんでいっつもあたしばっかりっ!! なんでこんなに苦しまなきゃいけないのっ!!」
「……薫っ、」
「あたし何もしてないのにっ! 霊感のせいで気味悪がられてイジメられて悪く言われて無視されてっ!!」
「……っ、」
「友達だっていた事ない! ある事ない事言いふらされて避けられて! 近付いてくるのはグループで仲間外れになった子だけ! 仲直りすればまたあたしを一人にして陰でみんなと笑ってる!」
「……っ、」
「家に帰ったってあたしはいつも針のむしろ! おばさんは何も言わないけど、心の中じゃあたしを責めているに決まってる! お父さんだって! お兄ちゃんだってそう!」
「……なに言ってる……」
「やっと安らげる場所が出来たと思った! 理解してくれる人と出会えたと思った! なのに利用されて捨てられて!
……なんなのっ! あたし何か悪い事した⁉︎ なんであたしばっかりこんな目にあわなきゃいけないのっ!」
「……薫っ!」
「生きてたって苦しいだけ! 全然なにもいい事ない! こんな理不尽もうたくさん! こんな人生! あたしなんてっ……あたしなんてっ!!」
薫の両手に力がこもる……
「もう死んでやるっ——」
「——薫っ!!」
迫る刃先……
——パシッ!
あたしはとっさにビンをつかんだ。
右手の指から血が垂れる……
「「……っ!!」」
「だから何っ! それがどうしたっていうんだっ!」
言葉が口をついて出ていた。
「霊感があるなら薫だって分かるはず。自殺したやつ、全然楽になってない。むしろ何倍もずっと苦しみ続けてる」
「……っ……」
「死んで永久に苦しむぐらいなら、今その理不尽にどう立ち向かうのか、どうすべきか、ちゃんと生き抜く方法を考えろ!」
真剣に、まっすぐ薫を見て言った。
——ガンッ
ビンを遠くに投げ捨てる。
「あたしも、一緒に考えるから」
「……あ、 ……ああ……」
薫は血が滴るあたしの手を見つめてる。
そして、
「……あ……ぅぅ……」
力なく地面に崩れ落ちた……


