「……っ! おまえ何やってるっ!」
「……死んでやる……」
「……っ!」
薫は、さっきとは様子が違っていた。
悲しさよりも怒りのような、攻撃的なその態度。
「薫っ! おまえ自分が何やってるか分かっ——」
「——ああああぁぁ〜っ!!!!」
薫はありったけの大声で叫んだ。
「もういぃぃっ! もうどうだっていいっ! どうせ全部あたしのせいっ……あたしのっ! 責めればいいじゃないっ……そうやっていつもみたいにいぃぃっっ!!」
「……おい、落ち着け!」
「なんでこうなるのっ! いっつもいっつも! あたしばっかりっ! あたしばっかりっ!!」
「薫っ! 落ち着けって!」
「……うぅぅぅ……!」
薫は唇を噛みしめる。
ビンを首にあてたまま透を強く睨みつけた。
「……薫、頼むからやめてくれ。一体何があったんだ……」
「ハアァァッ!」
大粒の涙をこぼしながら薫は荒く息を吐く。
「……なあ、薫……」
「…………」
「……なあ、」
語りかけるような口調に、薫はゆっくり口を開いた。
「……騙されてたの」
「……は?」
「あたし騙されてたの。最近付き合った人に」
感情のない声で薫は淡々と説明する。
「……なんだ、それ……」
「一人じゃないって言ってくれた。あたしを守るって。大切だって言ってくれたの。でも、」
「……?」
「そんなの嘘だった。 彼ね、ヤクザだったの。あたしを利用しようとしていただけ」
「……なっ……ヤクザ⁉︎」
「お父さんが警察関係だったからあたしに近付いたの。あたしを利用して警察内部の情報を手に入れるつもりだったみたい」
「……はあっ⁉︎」
「でも、うまくいかなかったみたいで……彼、突然豹変したの。まるで別人だった。急に脅されて、出来ない事をやれって言われて。失敗したらすごく怒ってあたしを殴って……」
「……なにッ!」
「……ねえ何でだろう。なんであたしはいつもこうなの? 小さい時からこんなのばっか……なんで……なんで……なんで……!」
また、薫の感情が高ぶってくる。


