「……なんでえぇぇ! ……好き、だったのにいぃぃっ……あたし……ひどいぃぃ……うわあああ〜っ!!」


「……薫……」


「信じてたのにいぃぃ!! ……あたし……あたしを好きって、言っ……あああ〜っ!!」


「薫、落ちついて!」


「……ひどいいっ……ひどいぃぃっ! ……なんでっ……なんであたしばっかりっ……あたしばっかりっ!!」


——ダッ……

薫はどこか走っていく。


「……あっ! 薫っ!」


あたしも後を追いかけた。


——ダダダッ……


「……待って薫っ……」


——ドンッ!


道の途中、あたしは黒い人影とぶつかった。


「……痛っ、」


……あ。

そこにいたのはあたしが知ってるあの人物。


「……は⁉︎ お前……あまつか⁉︎」


暗がりの中、透は眉を潜めてあたしを見た。


「……なんだっ⁉︎ どうしたんだその怪我っ!」
「——それより薫が!」


あたしはすぐに訴えた。


「……⁉︎ 薫⁉︎ 見つけたのか⁉︎」


「あっち! 大変! 危ない! 追って!」


「……⁉︎ ……薫っ!」


何か感じとったのか、透は急いで走り出す。


……はあ、 また頭がクラクラする……


フラつきながらあたしも走った。



・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・



「来ないでっ!」

「薫っ!」


……?

ひと気のない路地裏から薫と透の声がする。


「探したんだぞ! お前今まで何やってた!」


「来ないでって言ってるでしょっ!」


小さな飲み屋の裏口で二人は言い争っていた。


「どうした! 一体何があったんだ!」


「お兄ちゃんには関係ないっ!」


「関係なくねえだろっ!」


「うるさいっ!」


——バリンッ!


薫は置いてあった空き瓶を電信柱に打ち付ける。


「……っ!」


割れて尖ったビール瓶。

それを自分の首に向けて構えた。