「大丈夫か!」
喧騒の中、若があたしに顔を寄せる。
ウエーブのきれいな金色の髪が、あたしの顔に少しかかった。
「お前バリアーはどうした! 今日は不安定ではないと聞いたぞ! それが何故こんな怪我を!」
「あ〜。ついさっきから不安定になった」
「……っ、なんだそれは!」
戸惑いながら、若は貫通した左手のナイフに手をかける。
「……痛いだろうが少し我慢してくれ」
そう言うと素早くナイフを抜き取った。
「悪い」
ポケットからハンカチを取り出し、急いでそれを巻きつける。
「大丈夫。あたし痛みは感じないんだ」
「……は?」
「……でも、クラクラする」
けっこう出血したせいで体に力が入らない。
若がそんなあたしの体を支えた。
「大丈夫か!」
「うん。でも、どうして若……」
「お前は凌駕( りょうが )と呼べ」
「……りょうが。 どうしてここにいるの? 玉ちゃんもみんな……」
「今更どうしてもないだろう、何の為の連携だ。 ……だが、すまなかったな。次男坊の動きだけは容易に把握し切れなかった」
「……だから、なんの話?」
すると、凌駕はハッと息をのみこんだ。
「……お前、 まさか……」
「……?」
「今まで……何も知らないでいたのか……」
「……何を?」
「……っ! 何故親父が毎日お前に電話していたと思う! お前の体調とその周辺の動きを探っていたからだろう! オレたちはずっと目的を同じに動いていたんだぞ! 山川を潰す今日この日の為に……!」
「……そうなの?」
「その旨の話を親父はお前にしたと言ったが?」
「……うん?」
「オレも何度かメールしたはずだが?」
「……メール?」
「覇鬼の愚連隊は任せると。族は族同士でケリをつけさせ、組は組同士……あとはこちらが全て始末をつけるつもりだった」
……メール……
「……あ、」
あたしは謎のメールを思い出した。
「……凌駕だったの? ずっとゴミ屋さんだと思ってた」
「……っ、誰がゴミ屋だ!」
「だって、全然漢字が読めない。今度から全部ひらがながいい」
「……まったく」
凌駕は大きくため息をついた。