「とにかく大丈夫ですから。それと黒木さん、彼女はもう万里ではありません。 彼女は、美空。
天使美空(あまつかみく)です 」


「「あまつか みく?」」


黒木と一ノ瀬の声がかぶる。
二人とも眉根を寄せて困惑の色をにじませた。


「おい一樹、どういう事だ 」

「 まあ、説明はあとで 」


一樹は少女に向き直る。



「美空、この人たちはあなたを傷つけたりはしません。だから大丈夫ですよ 」


"……ブーン……"


バリアーが振動し、風が一樹の黒髪を揺らす。


「 美空、大丈夫 」


"ブン……フルルル、ル……"


やがて、“シュン”と小さな音を立て、バリアーはほどけるように消えた。

辺りがシンと静まりかえる。

美空はゆっくりとまぶたを開けた。

その瞳は、赤にも茶色にも見える、きれいな紅褐色であった。