SignⅠ〜天狗のしるしと世界とあたし



「…………」


あたしは何も言葉が出なかった。

あたしは知っている。薫が嘘をついていない事を……。

一ノ瀬は特殊な任務に就いている。だからその情報は堅くガードされているのに。


……いや、それよりも……


いろいろと思う事がありすぎてうまく頭が回らない。

でも、今、あたしは確かに感じてる。

心に渦巻く感情を。

“ 怒り ” という名の感情を……



「……さあ、お喋りはココまでだ。お前は薫以上にムカつく女だ。キッチリ落とし前つけてやる」


次男坊の瞳がギラつく。

あたしも男を睨みつけた。

そして、


————ザシュッ!


二度目となる次男坊との闘いが始まった。


「……っ、」


最初の一撃があたしの肌を切りつける。


“ 最初に一発打たせてやる ”


そのルールを守るあたしは、もしそれがナイフでも、もちろんソレを受けてやる。


「……美空っ!」


遠くから奏太の緊張した声が飛んでくる。


「…………」


防御した左手からは生温かい血が流れ出た。


「クソッ!」


何とかしてこっちへ来ようと、奏太が攻撃の手を速める。


「「「「……っっ……!!」」」」


他の扇龍メンバーも、格闘しながら、しきりにあたしを気にしていた。


「ヘヘッ」


ニヤつく次男坊、


「……ふう、」


あたしはボディ接着バリアーを体に這わせる。

改めて次男坊と向き合った。



「……おっと、言い忘れていた。くれぐれもこの間と同じようにいくと思うなよ。あの時はだいぶ酒に酔っていた。シャブも手伝って平衡感覚がまるでなかった……だが今は違う。お前の命運もココまでだ」


血の付いたナイフがギラリと光る。


——ザシュッ!


また、ナイフが宙を裂いた。

ところが、


「……っ!」


二度目は通用しなかった。