SignⅠ〜天狗のしるしと世界とあたし


「……だから、なんで……」


あたしは訳が分からない。


「薫、楽しそうだった。アンタとのメール、話とか、すごく楽しそうだったのに」


「……あ?」


「アンタは違う……だったの?」


「……ハア〜、お前バカか。この俺が、本気でガキ相手にする訳ねえだろうが」


「……え?」


「まあいい。せっかくだから教えてやる」


淡々と次男坊は話し始めた。


「コイツと付き合ったのは親父が警察関係だと聞いたからだ。そして俺が山川組の次男坊だからだ」


「……? どういうこと?」


ますます意味が分からない。


「……フン、お前、極道ってどういうモンだか分かるか? 組織は組長を中心に動く完全なる縦社会だ。 俺はなあ、多くの配下を従える全国トップの暴力団、山川組の次男坊だ」


「……?」


「分からねえか? 次男坊だ。でけえ看板背負ってても所詮は俺は次男坊だッ!!」


男は怒りをあらわにする。
イライラしながら先を続けた。


「組は長男ばかりを優遇する。それがどんなヘボでも若頭だ。俺みてえな次男坊はどうあがいても無理なんだッ! でけえ手柄を立てねえ限りなッ!!」


「……手柄?」


「ああ、だから俺は思い付いた。薫を利用して、警察内部の情報を盗んでやろうとな。

聞けば、薫の親父は警察の中でも結構なお偉いさんだという話だ……だから他にもいろいろ利用出来ると目論んだ。まさに手柄をあげる絶好のチャンスと思ったよ。ところがだ……」


「……?」


「いざ調べてみると、警察名簿に薫の親父の名前はなかった。それどころか、どのデータを洗っても、なにも、なに一つ、情報なんて出てこねえッ!」


「…………」


「……つまりはだ、薫は俺に嘘をついていた。ガキが一丁前に俺を騙してやがったんだッ!」


激しい怒号……