SignⅠ〜天狗のしるしと世界とあたし


すると、


「もしも〜し? どちらさまあ〜?」


陽気な声が耳に届いた。


「……?」


見ると、一人の男がゆっくりこちらに歩いてくる。

年は奏太たちと同じくらい。大柄でオールバックの金髪男。

男は誰かと電話で話をしている。


「俺〜? さあ〜誰でしょう〜?」


陽気な声とは逆に、その顔には明るさがなく、目は暗く淀んでいる。


……ああ。


あたしはすぐに察知する。

こいつが山川組の次男坊……


……って、 あれ?

あの、耳にあててるやつ……


「ああ〜、コレ、銀髪オンナのケータイか〜」


……やっぱり。

男はあたしの電話のやつで喋ってる。


「さあ? オンナとはもう会えねえかもなあ? 何故なら……」


「……?」


「オンナは今から刑に処される」


——ガンッ

電話を投げ捨て、男はあたしと視線を合わせる。


「よお。 まさかお前が黒パーカーだったとはなぁ〜」


なめるようにあたしの体を見回した。


「……だが、それなら全て符合するか。黒パーカーの背格好、雰囲気や佇まい……今のお前そっくりだ」


「……?」


……ああ、

あたしは今頃気がついた。

なんだ、こいつ、あの時の……


次男坊と会うのは初めてではなかった。

あたしは前に一度会っている。

6月下旬、トンネルの中での乱闘で、あたしはコイツと戦っていた。


「あ〜あ。見たかったなぁ〜花火」


——バン! バン!

男は薫が乗っている車を叩く。


「……?」


「夏の終わりにドカンってな。人間が吹っ飛ぶ派手な花火をさあ〜」


男は停止した起爆装置に目をやった。


「残念だよなぁ。……まったく、お前一体なんな訳? さんざんこっちの計画妨害した上に、なんと自分は霊能力者。しかもその正体は黒パーカー……てな」


「…………」


「いくら何でもナメすぎだろ。お前どんだけ俺に殺されてえんだ?」


冷たい視線であたしを睨んだ。