SignⅠ〜天狗のしるしと世界とあたし


……ああ。

そういえば、そんな話も前に聞いた。

奏太が大熊組にスカウトされてるって……


……ふうん。


なんかちょっと冷たいな。

大熊組が欲しいのは奏太だけ。

だから大熊組が扇龍を、みんなを守るって事はないらしい……


「良くも悪くもない」


「……は?」


「あの大熊の人。奏太は、何か恩、感じてるみたいだけど」


「……分かる、のか」


「山川組よりはマシだけど。良いのイメージもあんまり、ない」


「……あ、」


哲平は少し口ごもる。


「……ま、ヤクザだからな。裏稼業だし、多少は手も汚れるさ……」


そのまま少し目を伏せた。


「ふうん。あたしの友達はいいやつなのに」


「……は?」


「あたしの友達、ヤクザなんだ」


「……はっ⁉︎」


「おじさんと、若いのと……」


「……っ! どこの組のモンだっ!」


……?


「知らない。しがない? ヤクザだって、言ってた」


「……っ!」


あたしは玉ちゃんたちを思い浮かべる。

最近は全然会っていないけど、電話だけは毎日くる……

さっきも少し話したばかりだ。

すると、


「……悪いな」


奏太が怪訝な顔で戻ってきた。


「お客さん、帰ったの?」


「……ああ」


ボスッとソファに座り込む。


「……っ! 奏太っ!」


哲平がバッと立ち上がった。


「……なっ、どうした!」


「今っ……こいつがおかしな事をっ!」


「…………」


——ハア〜。

奏太は大きく溜息をつく。


「哲平、美空の言う事を鵜呑みにするな。こいつは暇さえあれば変な事を口走る……」


やれやれといった様子でそう言った。


「……は?」


「まあ、オレも最初は面食らった。今も慣れたとは言えねえな……」


ふっと奏太は笑みをこぼす。


「……なんだ、そうなのか……」


哲平は脱力しながら腰を下ろした。