SignⅠ〜天狗のしるしと世界とあたし



「…………」


岩男は微動だにしない。

そのまま大きく両手を振り上げると、


「……フンッ!」

バンッボンッボン! ……バゴッ!


その太い両腕で次々と覇鬼をなぎ倒した。


「……ッ!」
「ちっくしょ!」

——グワ!

振り下ろされる鉄パイプ。


「フンッ!」

バコ! ……ボボボボンッ!


どの攻撃も通用しない。

岩男は覇鬼を全員ぶっ飛ばした。


「「「……あぅ……」」」
「「「……ぐぅ……」」」


道に転がる覇鬼の群れ。


……すごい。


あたしはぼーっと立ち尽くす。

すると、


——ドスドス……

岩男がこっちへやって来て、軽々とあたしとヒョロヒョロ男を引き離した。


「おいっ! 薄井っ!」


「……おかん待って……」


「寝ぼけてんじゃねーぞコラ! ……たく、」


——ギロ!

岩男の視線があたしに移る。

何か言いたげにギリッと奥歯を噛みしめた。


……?

あたしはぐるっと視線を動かす。

再び迫る嫌な気配……


——シュンッ!


脇道から矢のようなものが飛んできた。


「危ない!」


あたしはとっさに岩男に言う。

矢は岩男の肩をぎりぎりかすめて、ブロック塀に当たって落ちた。


「……ッ!」


"ウ゛オオ——ンッ!!"


すかさず今度はバイクが猛スピードで突っ込んでくる。


“グイッ! ズザアア……!”


後ろに乗ってた男につかまれ、あたしの体は引きずられた。


「「「捕獲成功〜!!」」」


さっきよりも大人数がわらわらといっぱい集まってくる。


「……クソッ!」

「おっと動くな!」


あたしをつかんでいた男がサッとナイフを取り出して、それをあたしの首に押しあてた……