男の名前は一樹(いつき)と言った。

テレパスの能力者で、なかなか目を覚まさないあたしの意識を探っていた所を、伯耆坊に引っぱり込まれた……と言った。

“テレパス” と聞いた時は体が拒否反応を起こした。カイドウとダブって見えて、一樹の事をギッと睨んだ。

だけど、一樹はカイドウとは全く違う人間だった。


「 はじめまして。あなたはやっぱり、素敵な女の子ですね 」


そう言って、一樹はあたしの頭を優しくなでた。

あたしは、なんだかよく分からなくなって、伯耆坊をぼーっと見た。


「 言っただろ? 生まれつきの能力者の場合、使う人間によってプラスかマイナスに分かれるって。一樹は文句なしのプラスだ。いい力の使い方してるぜ~ 」


「それはどうも 」


伯耆坊と一樹が笑い合う。

さっき何があったのかは知らないけど、いつの間にか二人の間に信頼関係が出来ている。


「……名前、」

ふと、伯耆坊がつぶやいた。


「 前のは使えないだろ。おまえの新しい名前、オレが考えてやるからな 」