SignⅠ〜天狗のしるしと世界とあたし


テーブルに山と積まれた食べ物……

“ おなかすいた ” のひと言で、さっきみんながあたしにくれた。

そしてここは幹部の間。そこの個室で、あたしは奏太と話してる。


「いいか! タバコなんて食ったら死ぬぞ!」


「死ぬの?」


「……いや、死なないにしても中毒症引き起こすんだ!」


「ふうん」


もぐもぐ口を動かしながら、あたしは奏太に返事する。

ぐるりと辺りを見回した。


以前、商業施設だった頃、ここは従業員の休憩室だったようだ。

長テーブルとイスが並んだ室内にはミニキッチンまで付いている。


そして端っこの、あたしが今いるこの個室。

個室といっても扉がなく、つい立てで仕切られただけのこの場所は、奏太の寝床となっていた。


「…………」


そういえば初めて扇龍に来た時、あたしはここで目を覚ました。


「……おまえ、食ってる時はおとなしいな」


「……?」


気付けば、奏太がじっとこちらを見つめてる。

……と、


「……? ……顔、はれてねえか?」


奏太がそっとあたしの頬にふれた。


……ああ、さっき、殴られた時の……


「……やはり少し毒が回ったか。多めに水分摂っておいた方がいいな」


奏太はさっとその場を離れる。

すぐに戻ると、ペットボトルに入った飲み物をテーブルの上に数本並べた。


「……ハァ、 ……しかし、」


カチッと一本あけながら、あたしの隣に腰をおろす。


「オレも昔、無茶苦茶やったが……おまえの場合、別の意味で無茶苦茶だな」


「……?」


「今ならテルの言う事がよく分かる。 ……っとに、ちゃんと見張ってねえと次は何しでかすか……」


そう言うと、フタをあけたペットボトルを “ ほら ” とあたしに手渡した。


——グイ、

あたしはそれを一口飲む。

訳の分からない味が口中に広がり、あたしはピタッと動きを止めた。


「……どうした」


「全然甘くない。もっと、甘いのほうのやつがいい」


「……っ、ぜいたく言うな! 今はそれで我慢しろ!」