「起きて良かった。あのままじゃ事故、なってた」


「……居眠り運転、してたって事か。 だからおまえは……それで…………は??」


頭に手をあて、奏太が何か考える。

さっきみたいにくるくると、いろんな表情を浮かべていた。


……?


「……奏太?」


「……いやっ、だからっ!」


振り切るように奏太が言う。


「人助けは分かった。いや、だいぶ分からないがそういう事にしておこう……だがっ、」


「……?」


「おまえにはルールが必要だっ! いいか! 今度から静かにバイクに乗れ! 動いたり暴れたり手え離したら危ねえだろバカっ! バイクから何も投げんな! バックに目覚まし時計を詰め込むなっ!!」


まくしたてるように一気に喋り、奏太はハァ〜と息をつく。


「ルールは守る為にあるんだからな! ……って、おまえちゃんと聞いてるのかよ! 返事は!!」


「……わ、かった……」


本物奏太に詰め寄られ、あたしは思わず頷いた。


「……ふう〜、」


奏太はクルッと背を向ける。


「オレは疲れた、もう寝る」


そう言うとアジトの奥へと歩いていった。


——ザワ……


なんだあれ。

あたしはやっぱりよく分からない。

不思議な男だ、月島奏太。

よく寝る男だ、月島奏太……

ぼんやりと、あたしは背中を見送った。

すると、


——ザワザワザワ!


大きく雑音が沸き起こる。

見ると、さっきより人数は少ないものの、そこにいる全員の目があたしの所に向いている。

まるで珍しいものでも見るように、びっくりした顔でこちらを遠巻きに見つめていた。



「……美空ちゃん……?」


おそるおそる、陽菜が声をかけてくる。


「……奏太、どうしちゃったの?」


「なにが?」


「……だって、あんな奏太初めて。喋り方とか雰囲気とか、なんか別人みたいだった……」


陽菜は信じられないといった顔をした。