……へぇ、なんだ。
時々は本物奏太が出てくるのか。
「……よかった」
「……っ、何が良かっただ! おまえ人をバケモンみてえに! そういやさっきもオレをタヌキとかなんとか言ってたよなぁ⁉︎」
「……? アライグマだ」
「ケモノ呼ばわりすんじゃねえっ! だいたいおまえなぁ……!」
「……?」
怒ったような、困ったような、スネたような、意地っぱりのような……
目の前にいろんな顔の奏太がいる。
「……たく……」
ひとしきり言い終えると、奏太はダランと後ろへもたれた。
「……はあ、」
そのまま少し沈黙する。
どこか遠い目をしながら、奏太はぼーっと外を眺めた……
「……? 奏太?」
「…………」
「ねえ奏太!」
「……っ!」
やっと奏太がこっちを向いた。
「どうしたの?」
「……ああ、いや、」
少しだけ目を泳がせ、奏太はタバコを取り出した。
——シュッ……
一本それに火をつける。
「……すまなかったな」
煙を横に吐き出して、奏太がポツリあたしに言った。
「……なにが?」
「少し言い過ぎた。おまえといるとオレは何故か……」
「……?」
「……いや、こんなにぐいぐい遠慮なくモノを言われるのも久しぶりだと思ってな」
奏太は再び遠くを見る。
なにやら湿った空気が取り巻いた。
「最近じゃ岩男以外、誰も意見してこない。みんな先にオレの顔色を伺うからな……」
「……ふうん」
「……とに、おまえといると身ぐるみ剥がされる様だ。言葉の一つ一つに面食らっちまって、どうにも対処のしようがない」
「……うん?」
「正直っつーか、素直っつーか、まるで人に対する警戒心がねえんだな。 ……たく、どういう環境で育ったらそんな風になれんだか」
奏太は “ フッ ” と小さく笑った。


