SignⅠ〜天狗のしるしと世界とあたし



「……悪い、美空……」


しばらくして奏太が口を開く。


「お前には世話になりっぱなしですまないが、やはりこれ以上、お前はオレらと関わるべきじゃない。何も恩を返せないのが心苦しいが、それがお前の為だ……」


目を伏せ、奏太はそう言った。


……またか。

最近よく聞く"関わるな"


「あ、そう」


よく分からないまま、あたしは奏太に返事した。



「……でも良かったよ。キミが奴らに顔を見られてなくてさ」

「それがせめてもの救いだな」


テルたちがのろのろ動き出す。すると、


「……家まで送る」


奏太がボソッとあたしに言った。


「……え、」


「今度はちゃんとオレが送る。着替えてくるから待ってろ」


スタスタと奏太はどこか歩いていった。


「へえ、めずらしいね」
「罪滅ぼしってとこ?」


アオとハクがそんな事を言う。


「あたし、一人で帰れるのに」


「ばーか、おめえネンザしてんだろ。もう夜だし暗えし危ねえぞ。それに……」


テルがそっと耳打ちする。


「アイツ、あん時おめえ殴っちまった事、しばらく気にしてたんだ。素直に送らせてやれよ」


「……?」


……気にしてた?

あたし、べつに、慣れてるのに。



「……行くぞ。歩けるか?」


少しして、着替えてきた奏太があたしの前にやってくる。


「うん。大丈夫」


あたしはヒョコヒョコ歩いてみせる。

歩きにくいけど、全然痛みは感じない。


「奏太、そいつ気をつけてくれ」


「……なんだ?」


「すぐ手ぇ離そうとすんだ。油断してっとまたバイクから転げる」


「あ? ……ああ、」


テルと奏太の会話で、またバイクに乗るのだと気が重くなる。