SignⅠ〜天狗のしるしと世界とあたし



……なんだろう。


複雑に入り混じった感情が伝わってくる。

ショック、苛立ち、迷い、期待……?



「……すまない。お前には、何て言ったらいいか……」


……?

いつの間にか奏太がすぐ目の前に立っていた。


「……その恩人に、オレは……」


さっきまで鋭くて、全身が刃物みたいだったのに、急に奏太の様子がおかしい。

切れ味のなくなった奏太は言葉を濁し、何か悩む素振りを見せた。

……と、


「オイッ!」


突然響く大きな声。


「また女を巻き込むつもりじゃねえだろうなっ!」


背後には、おすもうさん級の大きな男が立っていた。


「……岩男」


“ イワオ ” と呼ばれたその男は、本当にゴツゴツとした大きな岩のようだった。



「 一年前、お前らの気まぐれで女連れ込んで、それからどうなった! お前らばかりが盛り上がって、コイツらとの温度差があるのが分からねえのかッ!」


——ガシャン!


イワオがついたてを蹴り飛ばす。

すると、こちらの動向を見守る、たくさんの少年たちと目が合った。


「皆が皆、お前らみてぇな喧嘩スキルがある訳じゃねえッ! 無傷でなんか済まねぇんだッ!」


……?

改めて少年たちをよく見てみる。

確かに少年たちはあちこちにケガや打撲の痕があった。



「「「……岩さん……」」」
「「「オレたちはそんな……」」」


「女が負担になってんのは事実だろっ!」


「「「「……っ……」」」」


少年たちは気まずそうな顔をする。



「……すまないとは思っている。だが岩男、頼むからもう陽菜の前でそういう事は言わないでくれ」


辺りを見回し、奏太は苦い顔をした。


「……フン!」


イワオは息を吐き捨てる。


「いいか! くれぐれも変な気ぃ起こすなよ。いくら世話んなったとはいえ、お前らも恩を仇で返したくはないだろう」


「……ああ、分かっている」


「……まあ、幹部の一人として、オレもお前に礼は言うがな」


ギロッとあたしを睨みつけ、イワオは巨体をひるがえした。


「「「「…………」」」」


居心地の悪い空気が流れる……