SignⅠ〜天狗のしるしと世界とあたし



「…………」


火柱のように熱く、氷のように冷たいものがあたしの中に流れ込む。


……へぇ。 やっぱり親子なんだ。


あたしはじーっと若を見る。

顔は全然似てないけど、心の動きがそっくりだ。

若と玉ちゃん、二人とも、二つの顔を持っている……



「……おい、美空。ちゃんと話を聞いているか?」


……あ。

あたしはハッと我に返る。

目の前には眉をひそめ、様子を伺う若がいた。


「……えっと、なんだっけ?」


「……おまえ……」


若は“ハア~” とため息をつく。


「だから、お前とオレたちとでは住む世界が違う。そう言っているんだ」


少し大きな声であたしに言った。


「……どうして?」


「分かるだろう。オレたちは極道だ。普通の一般人とは訳が違う」


「……違うって?」


「オレたちは裏社会で生きる者。陽の当たる世間様とは真逆の反社会的組織なんだ」


「……どういうこと?」


「……要するにだ。恐れられ、嫌悪され、疎まれ、時には糾弾される。そんな世界だという事だ」


「……難しすぎて、わからない……」


「……っ、悪者だという事だ! 天使と悪魔なら悪魔の方だ。分かったか!」


「……へぇ。そうなんだ」


「……まったく」


若は呆れた顔であたしを見つめた。



「危険だって付きまとう。加えて今は情勢も不安定だ。いつ何があってもおかしくはない。お前にとって何一つ良い事などないだろう」


「……良い事、ない?」


「ああ、そうだ。オレたちだけじゃない。組は他にも存在する。面が割れればお前だってどうなるか……。わざわざ危険な目に遭いたくはないだろう?」


「……うん?」


「だから、もう親父たちとは関わるな。それがお前の為だ……」


若は少し目を伏せた。