SignⅠ〜天狗のしるしと世界とあたし



「……さて、」


若の視線があたしに戻る。


「名前を何と言ったかな」


少しだけ微笑みながら聞いてきた。


「……天使 美空だよ」


「美空か。それはとてもいい名前だな」


「……うん、」


言いながら、あたしは意識を傾ける。


……? なんだろう。

複雑な感情が伝わってくる。

探るような、警戒するような……



「美空、世話になったな」


「……うん、」


「本当に、感謝してもしきれない」


「……ううん、」


「ところで——、」


スッと若の顔つきが変わる。


「親父とお前が友達だという話だが……」


……?

今度は覚悟のような強い気持ち。


「おやじって、玉ちゃんのこと?」


「……っ、……た、ま……」


若の顔が引きつる。

口元に手をあて “ ウウン ” と小さく喉を鳴らした。


「……?」


「……ああ、その親父がだ。カタギのお前と友達など、オレは未だに耳を疑う。柳や小暮にしてもだ」


「……かたき……」


「どういう気まぐれかは知らない。だが、お前とオレたちとではまるで住む世界が違う……

親父を助けてくれた事には感謝する。しかし、悪い事は言わない。美空、お前はお前の世界で生きろ。オレたちとはこれ以上関わるべきじゃない」


声のトーンを落とし、若は真剣な顔をした。