「……さて、」
若の視線があたしに戻る。
「名前を何と言ったかな」
少しだけ微笑みながら聞いてきた。
「……天使 美空だよ」
「美空か。それはとてもいい名前だな」
「……うん、」
言いながら、あたしは意識を傾ける。
……? なんだろう。
複雑な感情が伝わってくる。
探るような、警戒するような……
「美空、世話になったな」
「……うん、」
「本当に、感謝してもしきれない」
「……ううん、」
「ところで——、」
スッと若の顔つきが変わる。
「親父とお前が友達だという話だが……」
……?
今度は覚悟のような強い気持ち。
「おやじって、玉ちゃんのこと?」
「……っ、……た、ま……」
若の顔が引きつる。
口元に手をあて “ ウウン ” と小さく喉を鳴らした。
「……?」
「……ああ、その親父がだ。カタギのお前と友達など、オレは未だに耳を疑う。柳や小暮にしてもだ」
「……かたき……」
「どういう気まぐれかは知らない。だが、お前とオレたちとではまるで住む世界が違う……
親父を助けてくれた事には感謝する。しかし、悪い事は言わない。美空、お前はお前の世界で生きろ。オレたちとはこれ以上関わるべきじゃない」
声のトーンを落とし、若は真剣な顔をした。


