SignⅠ〜天狗のしるしと世界とあたし



「……やはり奴らですか?」


「ああ、間違いないだろう。最近の水面下での動きは特に気になっていたからな。近いうちにケリはつける。二人はこれまで以上に奴等の動向に注意してくれ」


「「はいっ!」」


二人はビシッと声をそろえた。


「……ところで……」


若があたしに目を向ける。


「……あっ、若! ですからそいつは!」
「……さ、さっき説明した通りで……!」


慌てる二人をよそに、険しい顔で若がこっちに歩いてくる。

あたしの前で足を止め、


「すまなかった」


頭を下げてそう言った。


「「……若??」」


「先程は礼儀知らずな事をした。本当にどこも怪我していないか?」


「うん。全然平気」


「そうか」


若は険しい顔をフッと緩めた。


……さっき、

あたしは若が乗っていた黒い車とぶつかった。

暗がりの庭園を歩いていたら、車が猛スピードで突っ込んできたのだ。

さいわい、ボディ接着バリアーとクマがクッションになって、あたしは全然無事だったけど。

ただ、運転してた人と、この若がちょっと動揺していて……

車がヘコむぐらいの衝撃だったのになんで無事なのかとか、そもそも誰だ? とか、なんだこのクマ! とか……


「ぶつかり慣れてる」
「玉ちゃんの友達」
「食べようと思った」


あたしが答えるたび、若の顔が引きつって、運転してた人に “ 怪しい!” とか “ スパイだろ!” って怒鳴られた。

若にもいろいろ問い詰められて……

すかさず柳と小暮が間に入り、あたしの疑いは晴れたけど。



「……柳、小暮。席を外してくれないか。少し女と話がしたい」


ふと、若がそんな事を言う。


「……え? ……しかし、」
「こいつ、喋りはあまり……」


「分かっている。心配するな。こちらから簡単な話をするだけだ」


若は流し目に二人を見る。


「「……はい……」」


不安そうに、二人は部屋から出ていった。