SignⅠ〜天狗のしるしと世界とあたし



「……今日は死んだ女房の墓参りでな。この日だけは女房と二人だけで話がしたいと、あいつらの付き添いは断っていた。それがまさか、こんな事になるとはな」


伏し目がちにそう言った。


「何があったの?」


「……いや、ワシも少し油断した。いつもなら造作もない事だが……奴らめ、今日は妙な技と道具を使い、ワシをここへ連れて来た。

一気に殺さず生き埋めにして、ゆっくりと殺すつもりだったのだ。たっぷり死の恐怖を味わうようにな……」


「……ひどい……」


「まあ、ワシら稼業は常に命を狙われるがな。それにしても情けない……ワシももうろくしたものだ。それだけ年を取ったという事か……」


玉ちゃんは遠くの方を見る。

汗が一筋、首筋を伝った……


「……? どうして?」


「……あん?」


「玉ちゃんはどうして命を狙われてるの?」


あたしは気になった事を聞いてみた。



「……どうしてって、ワシがアレだからに決まっとるだろう?」


「アレって?」


「ワシは……ヤクザだ。暴力団だ。それぐらい、気付いていただろう?」


「……? 知らない。ヤクザって? 暴力団って? 暴力するの?」


「……おまえ……世間知らずとは思っていたが、まさかここまでとは……」


玉ちゃんはハア~とため息をついた。



「世間的には嫌われる反社会的勢力だ。排除されるべき存在だとも言われとる」


「……?」


「だが安心しろ。ワシらは固く任侠道を重んじておる。カタギのおまえに暴力など……手をあげる事は絶対にない」


最後の方を強く、玉ちゃんは言った。


「……分かってた」


「……あん?」


「玉ちゃんはあたしを暴力しない。そんなの、最初から分かってた」


「…………」


「それに、世間的には嫌われるって、あたし、玉ちゃんも柳も小暮も好きだけど?」


すると玉ちゃんはスッと足を止める。


「……おまえは変わっとるのう。こんなオヤジの、一体どこが好きなのだ?」


不思議そうにあたしを見つめた。