SignⅠ〜天狗のしるしと世界とあたし



「みく? オレやるからいいって言ったろ?」


「……でも、」


——パタン。

冷蔵庫から食材を取り出し、湧人は手際よく朝ごはんを作り始める。

……すごい。

あたしとは逆に湧人は器用だ。

料理もほとんどやった事ないって言ってたのに、レシピ本を見ながら毎回上手に作ってみせる。



「……だいたい、何でご先祖様、みくにいろいろ言うんだろ? みくは関係ないのに」


タマゴをかき混ぜながら湧人が言う。


「あ〜、女は出来なきゃだめだって。修行しろって、ご先祖さま……」


「……はあ? なんだよそれ?」


「よく分からない。でも、あたしはやらないとだめだって。いろいろ覚えて、この家の為に働かないと、ココに来ちゃだめだって」


「……え?」


ピタッと湧人の手が止まる。


「……なに、それ、」


みるみる湧人の顔色が変わった。


「もしかしてそういうこと? だからご先祖様、みくにいろいろ……」


「……どういうこと?」

すると、


『ほれほれ、ここを片付けろ』
『家の乱れは心の乱れ!』
『掃除洗濯、やることはまだまだあるぞえ!』


……あ。

遠くでご先祖さまたちの声が聞こえた。


「湧人、ご先祖さま呼んでる。あたし掃除しなきゃ」
「——待って」


湧人がバッと腕をつかんだ。


「……?」


「みく、ご先祖様たちどこにいる?」


「どうしたの?」


「どこにいるの?」


「……あっち、だけど……」


あたしは縁側の方を指さした。


「……そう、」


湧人は縁側を見つめる。

そして、ムッとしながらこう言った。