SignⅠ〜天狗のしるしと世界とあたし


——8月15日。


「…………」


右手に包丁。

あたしは、ゴツゴツした大きなカボチャを見つめていた。


——ガッ!

カボチャに包丁を突き立てる。


「……んん、」


だめだ。 かたくて全然切れない。

……? 大きな漬けもの石が目に入る。

……よし。

あたしは漬けもの石を持ち上げて、


"ドゥン! ドゥンッ! ドォンッ……グシャッ!”


目の前のカボチャを叩き割った。


『『『……あ゛~っ!!』』』


「ご先祖さま、カボチャ切ったよ」


あたしはぐちゃぐちゃになったカボチャをかき集める。


『切ったってどこがじゃ!』
『ぶっ潰しただけではないか!』
『おのれはバカかアホか! どっちだ!』


「……?」


『ほんに料理の一つも出来んとは』
『なげかわしいことよ……』


ご先祖さまは呆れたような顔をした。



湧人の家に泊まること四日目。

あたしは、相変わらずご先祖さまに言われるがまま動いていた。

ご先祖さまはあたしに厳しい。

お婆ちゃんの看病の他に、なんかいろいろやれと言う。


家の掃き掃除、ふき掃除、おふろ掃除、トイレ掃除、窓ふき、草むしり……

今日は朝4時半に起こされた。

畑を作れと言うから、せっせと庭を耕した。

そして、今は朝ごはんの準備。

カボチャを切れと言うから切ったのに……


……はあ。

料理は苦手だ。

素質はあるらしいのだけど、よく分からないし興味がない。

切り方、煮かた、焼きかた、味つけ、さじ加減?大さじ?小さじ? なんかいろいろ難しすぎる。

すると、


「あー、真ん中の廊下通ってキッチン行きまーす!」


湧人の声が家中に響く。

ご先祖さまはササッとその場を離れていった。