「うん、なに?」
「あのさぁ、湧人は、どうして説明分かるの? あたしの説明、みんな分からないのに」
ずっと不思議だった。
みんなにはなかなか伝わらない説明が、どうして湧人には分かるのかと。
「……ああ、」
湧人は静かに前を見る。
歩く速度を落として答えた……
「母さん病気の時さ、辛そうで、苦しそうで、言葉もカタコトでしか喋れなくなったんだ……。 母さんが何を言いたいのか、何を言おうとしてるのか理解したくて……オレ、必死で努力したんだ」
「……努力?」
「うん。母さんのカタコトの言葉を集めて、頭の中で分析した。組み替えたりバラバラにしたり繋げたり。その時の状況や声の感じでいろいろ……。 そうしてるうちに、何を言いたいのか自然と分かるようになったんだ」
「……へぇ、」
「たぶん、みくの場合も同じかな。別に意識してやってる訳じゃないけど、自然と分かるんだ。みくが何を言いたいのか、みくの言葉が……」
「……そう、だったんだ……」
謎が解け、頭に一本、スジが通ったような感覚を覚える。
視界が少し開けたような気がした。
「……オレさ、」
視線を前に向けながら湧人が続ける。
「さっきまで、自分の体質が嫌だなって思ってた。何で自分がこんなんなんだろうって……。 でも、今はちょっと違うかな」
「……?」
「だって、みくの役に立てるだろ? 全然自覚ないけどさ、さっきみたいに何か力になれるなら、この体質も悪くないかなって……」
そう言って湧人は少し微笑んだ。
「……湧人……」
「……さ、早く帰ろ? 婆ちゃんの事、一応ご先祖様に頼んで来たけど、心配だし」
「うん!」
あたしは湧人と歩調を合わせる。
「でも、さっきの家のやつの話はだいぶ大丈夫だよ?」
「……ん? 何が?」
「湧人は声も聞けないってやつ。大丈夫。あたしがお母さんとの話、繋ぐから」
そんな会話を交わしながら湧人と道を歩いてる。
「……みく……」
「大丈夫! これで湧人、寂しくない!」
「……別に、寂しくはないけど……。 でも、みくを通して今日は十分母さんを感じられたから……ありがとう」
はにかんだように湧人が微笑む。
どこかの家のヒマワリが、とてもきれいに咲いていた。


