"ガシャンッ!"
カート置き場。
豪快な音をたてて転倒する少女。
「……あれか」
あたしはぎゅっと右手を握りしめる。
呼ぶだけ呼んで、もうとっくにしるしは消えていた。
……!
あたしの目に緊迫した光景が映り込む。
"……グオオ~ン……"
先ほどの “ 只ならぬ者 ” はこうしている間にも周りの人の念を吸い上げ、よりいっそう大きくなっていた。
「キャアッ!」
怯えた顔の少女は、背後に迫るソレの存在を確実にその瞳に捉えている。
「おい見ろよ」
「なにあれ?」
「頭おかしいんじゃない?」
ソレの存在が見えない周りの客は、取り乱す少女を遠巻きに、異様な目で見つめている。
それでも周りを気にする余裕などない少女はすぐにそこから走り出した。
「……あ、待って!」
あたしは少女を追いかける。
正確には少女を追う、黒い影を追いかける。
ところが、
——ガシャン!
さっき少女が転んだ場所で、あたしも派手に転んでしまった。
その拍子に開いたままのバッグから、いろんなものが飛び出してしまう。
「……おい! 何やってんだよ!」
すかさず誰かが駆け寄ってきた。
……あ。
そこにいたのはまた、透。
「大丈夫かよ! ……てか、おまえ何いきなり逃亡してんだよっ!」
透は鋭い目つきであたしを見つめた。
「ごめん透、あたし今急いでて——」
「——はあ⁉︎ なんだ⁉︎」
透は床に散らばったものに目をやった。
そこには、お面、人形、ロープ、洗剤、粘土、花火、風船、髪の毛、ろうそく、その他いろいろ……
「……意味わかんねえ……おまえバッグに何詰め込んでんだよっ!」
不気味そうに、透は髪の毛を拾いあげる。
すると、何かがコロンと滑り落ちた。
「あ!」
あった。あたしの黒水晶、
……よし!
あたしは再び駆け出し——
「——おい!」
透がガシ!と腕をつかんだ。
「待てよ! 今度はどこ行く気だ!」
「透、あたし急いでるんだ!」
「だからどこ行くんだよ!」
振り払おうとしても透は手を離さない。


