SignⅠ〜天狗のしるしと世界とあたし



……ふ~ん、売ってないんだ。


……じゃあ、どうしよう……



「つーか、今日はちゃんと帰んだろーな? マンション」


「ううん、帰らない」


「……は⁉︎」


「お婆ちゃん長引く。看病する。お盆終わるまで」


「……っ、お盆終わるまでっておまえ! どんだけお人よしだよ!」


「……?」


「……ハァ。おまえなぁ、その、」

——ゾク!

突然背中に悪寒が走った。


……あ、そうだった。

あたしはハッと思い出す。

8月、あたしは多くの霊に遭遇する。


“……ズズ、 ……ズ……”


気が付けば至るところに黒い影。

こちらの様子を伺うように影は距離を詰めてきていた。


「……って、おい! 聞いてんのかよ!」


「あ~、うん、」


透の話もそこそこに、あたしはごそごそバッグをあさる。


「……つーか、そのバッグもデカすぎじゃね? おまえ、なんでいつもバッグがデカいんだよ⁉︎」


「……うん、」


……あれ?

黒水晶の数珠、たしかこの中にしまったのに。


……ない。 ……どこ?


その間にも、影はジリジリこちらに向かってくる……


「なに探してんだよ?」

「あ~、」


まあ、数珠がなくても何とかなるか。

今までだってそうしてきたし、でも、


……面倒だ……



"……フッ! ……ブン!"


黒い影が磁石みたいにくっついてゆく。


"ブン! ブン! ……ブン!!"


影はみるみる大きくなり、 “ 只ならぬ者 ” へと姿を変えた。

ジメジメとした空気が伝染する……