SignⅠ〜天狗のしるしと世界とあたし

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「はまぐり、カモ、あらまきジャケ、ベラ、よしたけ、ぽっぽ、すあま……」


湧人の家から一番近いこのスーパー。

店内はたくさんの買い物客で溢れていた。

迫りくる人の波をよけながら、あたしは首を傾けている……


「きび、らくがん、あまずらせん?」


……なんだそれ。

メモしたはいいけど分からないのが多すぎる。


「……はぁ~、」


まだカラの買い物カゴ。

あたしはひとまず食品売り場を離れた。


・・・・・・・・・・・・・・・・・


……うん?


店内をウロウロすること一時間、あたしは花売り場の前で足を止めた。

明日からお盆とあって、そこにはたくさんの菊の花が並んでいる……


……あ。

そういえばご先祖さま、花がないと寂しいって言ってたな……

あたしは束になった菊の花に手をのばす。

すると、


「……おいっ! おまえ何やってんだよっ!」


荒々しい大声と共にガシッと右手を掴まれた。

……?

そこにいたのは、透。

汗だくの透は息を乱しながら、あたしを睨み付けている。


「とおる、久しぶり。どうしたの?」


「……っ、どうしたのじゃねーよっ! おまえ一体どういうつもりだっ!」


つかまれたその手に力がこもる。


「……なんのこと?」


「なんのことっておまえっ……家出してんだろーが! なんでそんな事してんのかって聞いてんだよっ!」


切れ長の目を尖らせ、透があたしを怒鳴りつけた。


……ああ、

家出って、あれか。さっきの電話の。


「透。あれはちがう」


「……あ?」


「家出ちがう。言葉、まちがえただけ」


「……はあ⁉︎」


透は力の抜けた声を出した。