SignⅠ〜天狗のしるしと世界とあたし



「……どっちも亡くなってたの? ……っていうか、今の……どういう事?」


「…………」


そこから先は口が動かなかった。


"ブー、ブー、"


代わりにポケットの中の電話のやつが振動する。


「……あ、」


どこか遠くに飛んでいた意識が戻り、困惑した表情の湧人と目が合った。


「……ねえ、みく……?」


「……あ~。ごめん、また今度」


背を向け、あたしは通話の所をタッチする。


「もしも——『ミクう~!』」


大音量が耳に響いた。


「……黒木……」


『わりいなぁ~。急にこっちバタバタしだしてヨオ~、まだいつ帰れるか分かんね~んだ』


「……そう、」


『一人で大丈夫かあ? ほんとゴメンなあ?』


「ううん、一人じゃないし」


『……へ?』


黒木の声が少し途切れる。


……?


「……もしもし?」


『…………』


「もしもし? 黒木?」


『……ミク? 今、誰かいるのか? マンションに……まさかオトコ、とか……?』


「……今? オトコ? 分からない。あたし、マンションいないから……」


『……ん? ……は? イナイ?』


「うん。ついでに、もうちょっといないんだ」


『んあ⁉︎ ど、どーゆう事だあ? ミク⁉︎』


「あのね、あたし、ちょっと家出してる」


『……はああああ~っ⁉︎ いえでええええ~〜っっ⁉︎⁉︎』

——プツ!


……あれ。

突然電話が切れてしまった。

どうやら充電が切れたっぽい。


……う~ん?

なんか黒木、絶叫してたけど……なんで?

すると、


「……みくっ!」


さっきの表情とは違い、慌てた様子で湧人があたしに詰め寄った。