SignⅠ〜天狗のしるしと世界とあたし



「……悪いことしたな」


「……え?」


「さっき。ご先祖様たち、オレのせいで吹っ飛んじゃったんだろ?」


「あ~、うん、」


「……やっぱり」


湧人はハァ~っとため息をつく。

窓の外を眺め、少しの間黙り込んだ。


"……カタ、ファア~……"


エアコンの風向きが変わる。

湧人のブラウンの髪の毛が少し風になびいた。



「なんか、みくがうらやましい」


しばらくして湧人が口を開く。


「……? うらやましい?」


「だって、会いたい人に会えるだろ? 視えるし、声を聞く事もできる。オレには無理だからさ、そういうの」


「……湧人……」


「それにこんな、霊を弾く体質だなんて……。
たとえ視えたとしても近くに感じる事もできない……オレ、みくがうらやましい」


力のない湧人の横顔……

銀の瞳は遠くの空を見つめていた。


「そんなこと、ない」


あたしも空の向こうに視線を移す。


「あたしだって会えてない。会いたい人には、会えてない……」


流れる入道雲を見ながら言った。


「……え、だって……」


「……う~ん。会いたい? よく分からない。視ないように、逃げてる、たぶん。アンテナ、無意識に閉ざしてる……」


隠れていた思いが、自然とあたしの口からこぼれていた。


「……? 待って、あえて視ないようにしてるって事? ……どうして?」


「あたしの、せいだから」


「……え?」


「お父さんとお母さんが死んだのは、あたしの……」


「……!」


緊張した湧人の顔が視界の隅に映り込む。