SignⅠ〜天狗のしるしと世界とあたし



「……婆ちゃんは?」


「大丈夫。今、また眠ったとこ」


「そっか。婆ちゃんいつも長引くんだ。咳とかなかなか治らなくてさ」


「うん」


「いろいろ、ごめん。婆ちゃんの事も、オレの事も……」


「ううん」


「看病、大変だっただろ?」


「それは、みんなが教えてくれたから。あたしは何も分からなかった」


「 ! 」


ピクッと湧人が反応する。


「……みく、話してくれる? 今言った事、さっきの事も。一体どういうこと?」


「……あ~、実は……」


それからあたしは、ご先祖さまが来ている事。ご先祖さまに看病を教えてもらった事。湧人が霊を跳ね返す体質だという事を話した……



「……オレが、霊を弾く……」


たどたどしい説明が終わると、湧人は呆然とつぶやいた。


「二年ぐらい前。突然って。拒絶じゃないかって、ご先祖さま」


「……二年前、 ……拒絶……」


少し考えてから、湧人は “あっ” と小さく声をもらす。


「……そっか。そういう事か」


納得したようにうなずいた。


……?


「湧人? どういうこと?」


「うん。ほら、前に言ったろ? 母さん死んでからいろいろあったって。

オレ、その時人間不信でさ。それこそ神や仏も何もかもを拒絶してた。

その拒絶が原因でそうなったって言われれば、“ ああ、そうなんだ ” って、自分でも納得するっていうか……。 

変なの。拒絶とか、今は全然そんな事ないのに」


目を伏せ、湧人は苦笑した。