SignⅠ〜天狗のしるしと世界とあたし

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「……ごめん……」


共有リビングルーム。

今は黒木と二人きり……


「……ごめん、黒木……」


あたしは謝っていた。

ケガをさせてしまった黒木に。



「な~に謝ってンだぁ? オレはヒーラーだぞお? こんなのどうってコトねーしぃ! ホレ、もう治っちまったぜぇ♪ 」


そう言って黒木はあたしに手をかざす。

親指の付け根部分にあった傷はもうすっかりふさがって、赤い傷痕だけが残っていた。


「……でも、痕が、どうして? あたしは残らないのに……」


「ハッハッ~! ミクは特例だな♪ きっと天狗サマが力を貸してくれてんだ。相乗効果っつったかぁ? ホント、自分でもビックリするぜぇ~ 」


「……本当に、ごめん……」


「ダア~ッ! ミクはなんっも気にする事ないんだぞ? コレはオレの勲章だ♪ 男の生き様だ♪」


黒木はあたしの頭をワシャワシャした。



「……ユリは、大丈夫なの?」


「あ~、ユリかぁ?」


ユリはさっきのでだいぶ力を消耗したらしく、自分の部屋で休んでいた。


「ン~、そ~だなぁ~。あんなに弱ったユリも珍しいなぁ~ 」


「……うん」


サイコセラピストのユリは心の傷を癒す力を持っている。

闘いの場においては、仲間の精神力を回復させ、恐怖や狂乱に陥った者を落ち着かせたりしていた。



「でも、ユリはミクの力になれて良かったと思ってるハズだぜぇ~? だってよお~、あの日からユリが力を貸そうとしても、ずっとミクは拒んできたダロ?」


「あ~、 ……うん 」