——シュッ!
腕に包丁を振り下ろす。
しかし、
「……っ! 」
刃先はタトゥーではなく、別の所へ飛んでいた。
——ゴトッ、
床へ落下する包丁。
刃は黒木の手を切りつけていた。
黒い肌から血が垂れる……
「……あぁ……」
夢から覚めたように一気に頭が冷えてゆく。
「……ミク? 大丈夫か?」
痛がるそぶりも見せず、黒木はあたしに微笑んだ。
「……あ、あたし……黒木……」
——ガバ!
隙をみてユリが抱きついてくる。
「……!」
荒々しい気性がほぐされて、
心が、やわらかになってくる……
グンッと理性が引き戻された。
「…………」
憑き物が落ちたように、急に心が静かになる。
「……はあぁぁ~……」
力が抜け、あたしは床に座り込んだ。


