SignⅠ〜天狗のしるしと世界とあたし


——シュッ!

腕に包丁を振り下ろす。

しかし、


「……っ! 」


刃先はタトゥーではなく、別の所へ飛んでいた。


——ゴトッ、


床へ落下する包丁。

刃は黒木の手を切りつけていた。

黒い肌から血が垂れる……


「……あぁ……」


夢から覚めたように一気に頭が冷えてゆく。


「……ミク? 大丈夫か?」


痛がるそぶりも見せず、黒木はあたしに微笑んだ。


「……あ、あたし……黒木……」


——ガバ!

隙をみてユリが抱きついてくる。


「……!」


荒々しい気性がほぐされて、


心が、やわらかになってくる……


グンッと理性が引き戻された。



「…………」


憑き物が落ちたように、急に心が静かになる。


「……はあぁぁ~……」


力が抜け、あたしは床に座り込んだ。