「……ハァ、……ハァ、」


壁際に飾られた仏像たちがグラリ揺らめく。

かろうじて意識を繋ぎとめていた線香の香りも、もはやその効力は弱い。

ガクガクと大きく体が震えだす……



"……オモイダシテ……"


子供か大人か、男か女かさえ分からない声が擦り抜ける。


……またか。


重苦しい空気が流れ込み、ジメッとした、陰気な自分が顔を出す。


"……オモイダシテ……"


"……オモイダシテ……"


"オモイダシテヨオーーッッ!!


「 ! 」


声の旋風が意識を散らし……


あたしは無重力の空間をさ迷う……


ゆらゆらと踊らされながら


あたしは声の主に言う……



『……おもいだしたよ……』


思い出したんだ。

お父さんとお母さんの事はもうとっくに


『 でも、また見なきゃだめなの? 』


二人が殺されたあの場面を


あたしの罪を……



『……わかったよ 』


" オ゛オ゛オ゛オ゛~ッッ!!"


地獄の底から這い出たような、死霊のうめきがあたしを取り巻く……


……っ、


忌まわしい記憶が再生される。


何度も何度も何度も何度も何度も何度も
何度も何度も何度も何度も何度も何度も



『 きゃああああああああっっ!! ……お父さんっ! お母さんっ!! いやああああああーーっ!!!!!』