SignⅠ〜天狗のしるしと世界とあたし

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「……う、ん……コホッ、」


息苦しくて目が覚めた。
あたしは黒いソファの上。


……どこ?


タバコの煙が充満してる。


「 コホッ! コホッ!」


咳き込みながらモソモソッと起き上がる。


……?

ソファの横には、“工事中”と書かれた黄色と黒のしましまのついたてが置かれていた。


「……大丈夫か?」


誰かが“ガラッ” と窓を開け、その人物があたしの前にしゃがみこむ。

ツヤのないミルクティ色の髪の毛、長い前髪からのぞく威圧的な瞳、耳にはたくさんのピアス。顔の所どころには殴られたような傷痕……

刃物のような鋭利さと、危険でモロい、危うさの漂う少年。


「……大丈夫、なのか?」


伏し目がちに、少年は同じ事を聞いてくる。


「……なにが?」

「 なにがって 」


少年は手を伸ばし、あたしの髪をかきあげる。


「 まだ痛むはずだ 」


少年はソファに転がっていた保冷剤をあたしの耳の下に押しあてた。


「……はあ、 ……ったく、女を殴ったのは初めてだ…… 」


黒い瞳が左右に揺れる。


「……すまなかった 」


バツが悪そうに少年はあたしに頭を下げた。


「…………」


……そうか。

言われてあたしは思い出す。

こいつ、あたしを殴った奴か。


「 あ~。別にいいよ 」


あたしはグ~ッと伸びをする。

もともと痛みは感じないけど、黒木がくれた防護服のおかげで、蹴りを受けた背中も、骨に異常はないようだ。


「 そっちの方が痛そうだけど?」


あたしは少年に顔を近づけた。


「……!」


一瞬驚いたように目を見開き、少年はあたしをジッと見る。

そのまま視線を合わせていると、


「……おまえ。オレが怖くねえのかよ 」


困惑したように、少年はゆっくり立ち上がった。