SignⅠ〜天狗のしるしと世界とあたし



「……つーコトはだ。オレらがやる事はただ一つ…… 」


「 おうよ 」


「 一人残らず借りは……返すっ!」

——ガンッ!
 

「 オラオラッ!」

"ザガッ……バキ! ガッ! ドスッ!"



もうすっかり日が暮れていた。

点滅するぼやけた街灯のあかりが、殴り合う人影たちをうつしだす。


「来いやっ! オラッ!」

“ザシュ! ザシュ! バギ! ドゴッ!”



……へえ。

テルも強いけど、あいつ、もっと強いな。


あたしは、あいまみれる影たちを物陰からじーっと見つめていた。


40対2のはずなのに、テルともう一人がどんどん敵の数を減らしていく。


いつの間にか20対2……


そして10対2……


あと少しで全滅という時、


"……ワンッ!"


それまで静かだったモコちゃんが急にあたしの腕から飛び出した。


"ワンワンワンッ!"

「 モコちゃん!」


あたしはモコちゃんを追いかける。


「……あ?」


間の抜けたテルの声がした直後、


——ドゴッ!

強烈な蹴りがあたしの背中を直撃した。

間髪入れず首元をつかまれ、今度は拳が宙を切る。


「奏太やめろっ! そいつは——」
「——っ⁉︎」


テルの声にハッとなるも、繰り出した拳はもう止まらない。


——ゴッ!


寸前で躊躇した拳は軌道を変え、あたしの耳の下あたりを殴りつけた。


「……美空っ!」


……ああ、


……脳が揺れる……


あたしは知ってる。


頬を殴られるより、こっちの方がはるかに急所だってこと。


「……っ! ……女っ⁉︎」


……やっぱりこいつ、強い……


動揺する男の気配を感じながら、あたしは意識を失った……