SignⅠ〜天狗のしるしと世界とあたし


あたしは坊主に近づいてみる。


……あれ、

坊主は顔じゅうアザだらけで、片目がボコッと腫れていた。


「……外人? てめえ、覇鬼の女か 」


もう片方の細い目を三角に吊り上げ、坊主があたしを睨みつける。


……?

あたしは坊主の前にしゃがみこんだ。


「……顔、どうしたの?」


「……あ?」


「 ボコボコだよ?」


「 あ゛? だから何だよ 」


「……べつに 」


「…………」


坊主は威嚇したまま視線をそらさない。


「 あ~。お昼寝、起こしちゃってごめん。モコちゃん探しに来たんだ 」


「……モコ、ちゃん?」


「 ほら、この犬 」

"ワンッ!"

あたしはモコちゃんを坊主に見せる。


「……てめえ、覇鬼の女じゃねーのか 」


「……ばき? なにそれ 」


「…………」


坊主は不審そうにあたしとモコちゃんを交互に見る。

そのうち、


「……へっ、奴らの女が一人で来る訳ねーか」


やっと坊主は視線をはずした。


「 わざわざ犬探しに来たってか? こんなトコに 」


「 モコちゃんだよ 」

"ワンッ!"


「 モコちゃんだか何だか知らねーけど? 一体おめえ、どっから入ってきたよ?」


「 あ~。あの窓だよ 」


あたしは小窓を指差した。