SignⅠ〜天狗のしるしと世界とあたし



それから、大通りに出た所で、あたしは一人のお婆ちゃんに遭遇した。

あたしのESPがその異変をキャッチする。


「……?」


前を歩くお婆ちゃんは、少し歩いては立ち止まり、腰を丸めては深呼吸を繰り返している。

そのうちガクッとひざが落ちた……


「お婆ちゃん! ……どうしたの⁉︎」


急いで駆け寄ると、お婆ちゃんは胸に手を当て、苦しそうに顔を歪めていた。


「……ううっ、バス停が、なくて…… 」


「……バス停?」


「……ハァ、ハァ……発作が…… 」


「……大丈夫⁉︎」


「……すみませんが病院まで…… 」


お婆ちゃんが指をさす。

見ると、数十メートル先に大きな病院が建っている。


「わかった!」


あたしはお婆ちゃんをおんぶして、急いで病院へ駆け込んだ。


・・・・・・・・・・・・・・・・・・


「 お世話になりました。ありがとうございます 」


お婆ちゃんは狭心症という心臓の病気みたいだった。

暑い中、長時間ムリして歩いたのが発作の原因らしく、幸い、点滴を打ったらすぐに発作は治まった。


「 ううん。お婆ちゃんが無事で良かった 」


お婆ちゃんの顔色が良くなったのを見て、あたしは病院を後にした。


————————————
————————————


……う~ん?


あたしは、さっきのお婆ちゃんと、湧人のお婆ちゃんの話を思い出していた。


……バス停が、ない。


バス停がないって、どういうこと?
昨日お婆ちゃんは神隠しって言ってたけど。


……?

あたしはふと立ち止まる。

目の前にはハゲ頭のお爺さんが、何やらぼーっと立ち尽くしている。


「 いつの間にここのバス停なくなっちまっただがあ?」


不思議そうにつぶやいて、お爺さんは立ち去った。


「…………」


あたしはお爺さんが立っていた場所に移動する。

すると目についたのは道路に書かれた白い文字。


——"鬼魔愚零泥参上夜露死苦"——


チョークのようなもので、ソレは雑に書かれていた。