金色に輝く満月……
途端に、とめどなく涙が流れ出した。
お父さんとお母さんの助けを求める声が、耳の奥で嫌な余韻を残している。
あんなもの、カイドウの作り出したタチの悪い幻覚だというのに……
「 お父さん。お母さん 」
あの時、あたしは確かに、殺されたお父さんとお母さんを見た。
……見たのだ……
カイドウに偽の記憶を刷り込まれていたとはいえ、人質にされたとか、協力しないと殺されるとか、そんなの……
人体実験で驚異的な力を身につけたあたしなら、それがニセのものだと、もう少し早い段階で気付けるはずだった。
……受け入れたく、なかったんだ……
お父さんとお母さんが死んだという現実から逃げていたかったんだ。だから——、
結局、ちゃんと自分の記憶と向き合えたのは8年も経ってからの事。
それまで、事実を見極めもしないで、言われるがままに奴らに力を貸していた。


