ポーンってば、本当に凄い。流石は戦徒って呼ばれるだけある。私は身軽で(自信アリ)、走るのに関してはカサディスでは男の子にだって負けなかった。その私が必死で着いていくのが精一杯。息が乱れ、苦しい。もう何時間走り詰めだろう。口の中に血の味が混じる。でも、先を走るトバちゃんと、すぐ後ろを走る姉さんは何か話しながらだし、表情は至って普通。息も切らしてない。私が足を引っ張っている……。
「ね……ね、姉さん、さ、先に行って。り、領都の、ひ、人たちを、た、助けてあげてぇ!」
まともに声も出ない。
「承知。」
「じゃあ、マチルダさん、お先です!」
二人は更にスピードを上げ、疾風のように消えた。もう何も言えない。
 早く行かなくちゃとは思うけど、このまじゃ着いたところで戦力になれない。後のことも考えて今の最善を尽くす。それが姉さんの教えだ。途中、何度か疲労回復のポーションを飲みながら、それでも必死に領都を目指した。
 やがて山道を抜け、目の前には豊かな草原が広がる。見えた!領都だ。けれど、荘厳な城塞からは幾つもの黒煙が立ち上っていた。焦る気持ちだけが先行する。こうして目にははっきり見えるのに、なかなか近付かない領都がもどかしい。みんな、大丈夫だろうか。