「これでアイツとは三度目か。こういうのを因縁って言うんだよね?」
「前回は私は殆ど参加していませんが、それでも、毎度、サロモの魔術には辟易します。ただ、フィーを取り戻す足掛かりは得たように思います。改めて気を引き締めて参りましょう。」
「うん、そうだね。私たちだって強くなってるから、絶対に負けないよ。」

 そして対峙する私たちとサロモ。なんでだろう、この緊張。全身から汗が吹き出る。竜に化した時ほど威圧感はないけれど、底知れない迫力がある。その動揺が悟られたのか、魔術師から口を開く。
「隙だらけの貴様たちの首を取る機会は何度かあった。だが、せっかく甦った身だ。それだけの時を、この身を馴染ませるのに、そして、俺の魔力を高めるために使わせてもらった。
さぁ、存分に楽しませろ。」
「マチルダ様!」
「うん!分かってる!」
サロモが言うが早いか、私たちの足下の石畳が何度も大きく突き上がる。でも、アイツの詠唱の速さは経験済みだし、対処はするさ。続けて、頭上から落雷があるけど、私は身を翻し、再び魔導弓を手に攻撃に転じる。
「いっけぇ、連魔弾!」
輝く光弾。ヤツは身体を捻るだけで悉くかわしていく。
「覚悟!」
その何発目かが避けられた時、魔術師の背後から鋭い銀の一閃。姉さん!
 斬り裂いたのはサロモの残像。その姿がぼやけて消えた。転移の魔法も確か得意技。だけど、それも知ってる!私の光弾がアイツの転移先を狙う。避けきれないと思ったのか、サロモは掌を翳し、魔法の障壁で防御を試みる。でも!
「ちぃッ!小癪な真似を!」
光弾はサロモに届くかどうかのところで、目映く弾けた!サロモが顔をしかめ、動きが止まる。最後の一発は連魔弾じゃない。閃魔光。フィオーラとの戦いで学んだんだ。私のちゃちな魔力じゃ強力な魔導師の魔法防御は破れないって。けど、光までは防げやしない。やったぞ、サロモを出し抜いた。
「黄泉の国へ舞い戻れ、サロモ。滅せよ!」
姉さんの大きく振りかぶった渾身の一撃、魔神斬りだ!サロモは魔力を溜めた左手で防御を試みる……!
 姉さんと聖剣の力、サロモの魔力がぶつかり合い、小規模な爆発が起こった。粉塵が舞い上がる。だけど、アイツはこれくらいで倒れるほど柔じゃない。
「マチルダ様、上です!」
目視できた訳じゃない。でも、右手に短剣を握り締め、その疑うべくもない声の方へ走り出した。それほどでもない粉塵はすぐに収まる。見えた、姉さんの大剣!
「行くよ!」
「はい!」
『赤目』の時と一緒、戦いに終止符を打った姉さんとの連携。愛用の短剣を右手に、幅の広い聖剣を駆け上る。そして、跳ぶのと同時に姉さんが私を力一杯跳ね上げる。飛んだ!見えた!サロモは左半身からは大量の血を噴き出し、苦悶の表情を浮かべながら、虚空を漂っている。もうアイツを捉える。この一撃で!