Rain Days

「あおい」


みんなに気付かれないように、健があたしを呼び止める。

立ち止まった健に、あたしも立ち止まり振り返る。


「健?」

「俺、女が出来た」

「そっか。おめでと」

「おめでと、か」

「え?」


健の言葉が聞き取れず、あたしは聞き返す。


「嘘だから」

「え?」

「だから、女なんて居ねぇって」

「何それ」


意味のわからない、健の嘘。


「お前ら置いてくぞ」


前を歩く孝則に急かされ、あたしは小走りで後に続く。


「大丈夫か?」


あたしと健のやり取りを見ていた卓麻が、健を気遣う。


「わかってたことだ。いつだってあおいの瞳には、碧斗しか居ねぇ。昔も、今も」


健の言葉に、卓麻は慰めるように背中を叩いた。

そんな2人のやり取りを、あたしは全く気付かなかった。