虚空を眺めて

よく見れば、窓から朝日の光が侵入していて、薄暗い部屋を明るく照らしてくれていた。

「何だよっ!?」

月彦は階下にいるであろう母に声をかける。

『あんた! バッグを部屋の中に置きっぱなし!』

なんだ・・・。
そんなことか。
いつも、母には階下の部屋にバックを放り出して、怒られるとはこの事なのだ。

『早く! 支度なさい!』

階下から、母の声。
だが、なんとなく過保護なのでは、と思うこともしばしある。

月彦はそのまま階段を下りて行き、母のいる部屋へと入る。

「ったく、月彦は・・・何度言ってもわからないのかしらねぇ」

部屋に入ると、片手に月彦の高校のバッグをぶら下げながら、小言を言う母。
彼女の名前を天倉静子という。
名前は『静』だが、性格はやはり、全く正反対。
どうして、自分の周りの奴等は、名前とは正反対の性格の者が多いのだろうか・・・。
と、月彦は心の中で嘆いた。

「ったく、お兄ちゃんは!」

部屋に置かれたテーブルの席に座り、攻めるような口調で言う少女は、月彦の妹。
天倉あずきという。
あずき・・・と言う名前には何か、意味があるのかは不明だ。
・・・もしかしたら母が、あずき好きなのが関係しているのだろうか・・・。
彼女は今、市立の中学校に通っている、一年生だ。