「その手」
「.............?」
男の人はようやっと口を開いて言葉を発した。
言葉の意味がわからなくて、私は首を傾げる。
「その手は、その.............、声が出せなかったから?」
「.............っ、」
バッと傷跡のある手を背中側に隠すけど、もう遅かった。
「そう、なのか?」
「.............」
「そうですよ」
答えられなくなってしまった私に代わって蒼汰が言った。
「茉莉が、そこにいるって気づいてもらえなくて。気づいた俺が、助けたけどこの有り様」
「.............」
「跡に残っちゃって.............。俺が早く気づかなかったから」
「(そんなこと、ない)」
「え?」
「(そんなこと、ない。蒼汰が気づいてくれて嬉しかった)」
「.............っ、」
「(蒼汰が守ってくれた)」
思わず振り返って、スマホにも打ち込まず音の出ない口を開けて言った。
守ってくれたのに、気づいてくれたのに、そんなことを言う蒼汰に私は怒っている。

