「おい、待てよ」
もうなんなの!
しつこいんだけど!
「な、何でしょう?」
「お前さ…」
そう言ってその“戸井一翔”は私の方へ一歩、また一歩と近づいてくる。
な、なんなの!?
その危険な雰囲気に思わず私は後ずさるけど、行き止まり。
壁にぶつかってしまった。
戸井一翔はどんどん近づいてきて、私の顔のすぐ近くの壁に手をつく。
え、これってまさか
壁ドン???
少女マンガでよくあるシーンだけど、なにこのシチュエーション!
あたしの初壁ドンがなんでよりによってこの頭の悪いナルシストなの!?
そんなことを考えてる最中もなぜか戸井一翔の顔が私の顔に近づいてきてる。
その整った顔だちに思わずクラッとしてしまいそうだったけど、
そいつの次の一言でそんな光景も一気に崩れ去った。
「歯に青のりついてるけど、お好み焼きでも食べたの?」
「は、はぁぁぁぁぁあ!?」
ちょっと!私!
相手が顔も知らない名前も知らなかった年下の男とはいえ仮にも男性の前でこんな失態をおかすなんてありえない!!
てかそれを直接言う!?ストレートすぎるでしょ!
なんでこの男はこんなに無神経なの…
ゆでダコみたいに顔を真っ赤にした私はダッシュで靴を履き替え、学校を出た。