「幼馴染」。

 涙は止まることを知らない。
 あたしはまた駆けだそうとした。

「おい、待てったら!」

 また強い力で引き戻される。

「もう、放っといてよ!」


 気にしてもらえて、傘を貸してもらえて、引き留められて嬉しいはず。
 なのに体は勝手に動く。

「春哉なんて、もう……大っ嫌い!」

 ……ああ、こんなの本心じゃないのに。
 今度こそ、もうこの手は離れていく……。
 覚悟を決めて、ぎゅっと目をつぶる。

 だけど、手首は春哉の手で包まれたままだった。
 振り向くとそこには、なぜか寂しげな顔の春哉がいる。


 その春哉が、ゆっくりと口を開く。