どうして? どうしてここにいるの? 実咲は? 聞きたいことはたくさんあるのに、声が出ない。 代わりに、涙だけがぼろぼろとこぼれる。 「沙絵、どうしたんだよ?びしょぬれじゃねえか……風邪ひくぞ?それに……何?泣いてんの?」 何か答えなきゃ。 でもあたしの体は、それを全力で拒否した。 春哉が傾けてくれた傘から抜け出して、一人で家に向かって走ろうとした。 だけど。